アメリカで出産〜ケース1(26週で入院、無痛分娩)〜

アメリカ生活を振り返ってみるとたくさんの思い出があるのですが、やはり一番の出来事は”出産”でした。出産は人生の一大イベントとも言いますが、特に妊娠から出産までの”十月十日”は様々なストーリーがあるのではないでしょうか?

私はアメリカで3度の出産を経験したのですが、実は第一子の時から曰く付きのリスク妊婦で、順調ではあったものの3人のそれぞれの出産までに初入院、初救急車など初めての経験をする事となりました。

その時は自分の置かれた状況がいまいち理解できず、ドクターに言われた事などをつなぎ合わせてネットで調べたりしていたのですが、そこで同じような経験をしたというブログを見て助けられたのを覚えています。

アメリカという言葉も文化も違う場所での出産にはやはり不安も多々あります。私の経験が少しでも誰かの参考になればいいなという思いのもと、今回は「アメリカでの妊婦生活から出産のリアルな体験談」を書いていきたいと思います。

ハート型の子宮!?

もともと学生の頃に「子宮がハート型だから妊娠する時は医師と相談してね。」と言われていたのですが、そんな事はすっかり忘れ第一子を妊娠しました。そのため”リスク妊婦”となったのです。

このハート型の子宮について、ずっと子宮の形がハートなのだと思っていたのですが、後から分かったのは子宮の中に線維でできた壁があり、それがハート型に見えていたとのことでした。子宮内に壁があるため、空間がとても狭く胎児は窮屈な中で十月十日過ごすことになるのです。

アメリカでは超音波エコーは通常2〜3回くらいしか行いません。しかし、リスク妊婦に関してはほぼ毎回検診でエコーを見ることができます。(なので第一子のときはエコーの写真がたくさんあります。ある意味ラッキーでした!)

26週で突然の出血&初めての入院

妊娠26週で出血がありドクターの元へ向かい診察をしてもらうと、このまま入院になるのですぐに病院へ行くようにと言われました。当の本人はあまり深刻に考えておらず、入院ならば着替えを家に取りに行って病院に向かおうと思っていました。

このように呑気にドクターに話をしていたら、「とにかく緊急よ!」と、「今すぐに病院へ!”Right NOW!”」と言われました。笑 普段は穏やかなドクターが少し焦っているようだったので、ここでやっと事の重大さに気づいたのでした。

ちなみにアメリカは妊婦検診で通う病院と出産する病院は別になります。イメージとしては検診のみを行うのがクリニック、出産は大きな病院という感じです。このような緊急の場合は大きな病院の中でも特に設備が整った病院へ行きます。

陣痛が始まる!?

わけが分からないまま病院へ行くと、色んな器具が設備された個室が用意されており、早速着替えて、ベッドの上に横たわりました。まず初めに点滴の針を刺します。(案の定、何度か失敗し内出血。アメリカあるあるです!笑)

腰には注射(ステロイド)を打ち、左手は点滴につながれ、右手は血圧を測る器具、お腹には赤ちゃんの心音モニター、両足には空気圧の出るパットがはめられ、トイレに行けないので尿管が通されました。まさに全身器具でつながれた状態。

ここから絶食で点滴との闘い!まさに地獄の24時間が始まるのです。時間が経つとともに少しずつ自分の状況を理解していくわけですが、、、切迫早産で子宮がかなり収縮しており、2分間隔で陣痛が始まっていたのでした。

恐怖のマグセント投入

マグセントとは、子宮の収縮を抑えるための薬で、全身の筋肉を弛緩するものであり、副作用が強いとの説明を受けました。薬が投入された瞬間、全身が内側から焼けていくように熱くなり、ジワジワ麻痺していく感覚。

さらに息ができなくて今にも溺れそう、、、目も開けていられなくなり、頭が朦朧としてまるで全身が苦しみに支配された感じでした。さて、このマグセント。別名「妊婦殺し」と言われる劇薬なのだそう。どうりで身動きが取れないわけです。

その後、24時間に渡り色々な薬が投入されました。正直説明されてもうる覚え状態です。一番辛いのは薬の投入口(管から血管に入るところ)がとてつもなく痛いこと。結局、その痛みに加え身動きがとれないのと空腹で一睡もできませんでした。

ちなみにマグセントを投入すると吐き気や食欲がなくなったりするらしいのですが、私は吐き気は特にありませんでした。兎にも角にも、お腹が空いてしょうがなかったのでした。笑

強敵ペニシリン投入

24時間の絶食と点滴が終わり、飲食の許可が出たのち、まだ点滴は繋がったままでしたが、マグセント投入のおかげで陣痛の間隔も5分、10分と伸び、張りや痛みも無くなりました。

点滴中に何度か投与されたペニシリン。これがまた強者で、体の中に入る度にじわじわと痛みが広がり腕に激痛が走るのです。手が針でえぐられるようなまるで刺されて焼かれる感じ。焼けるような痛みを初めて感じました。

あまりの痛みに耐えきれずナースに叫んでいました。笑 怒り狂うではなく”痛み狂う”ような拷問感。氷で冷やすと心なしか痛みが弱まるような気がしましたが、ひたすら耐え忍んでいました。

入院生活

約2日間の点滴による薬投与も終わり、新しい長期滞在用の部屋へと移動しました。点滴の針は刺さったままですが、緊急ではない限り薬投与はありません。(それでも針が刺さっている部分はずっと痛かったです。)

点滴のおかげ赤ちゃんもなんとかお腹の中にとどまってくれ、経過も順調でしたが、その後もまだ出血と腹痛が続いていたので、様子を見ながら絶対安静の入院生活が続きました。

毎日約1時間赤ちゃんの心音モニターチェックが朝昼夜の計3回あり、その間に血圧や体温チェックを3回、たまに採血するという日々が続き、10日間の入院生活を経て無事退院となりました。

つわりについて

妊娠初期のつわりはとてもひどく2〜3ヶ月はほぼベットから動けず、寝たきり状態でした。ひたすら船酔いのような気持ち悪さに耐え、やり過ごす日々でしたが、安定期頃には旅行へ行けるほど落ち着きました。

また、初期のつわりほどではありませんが、後期つわりもあり出産まで続きました。お腹が大きくなることによって胃が圧迫されて気持ちが悪くなるようです。お腹が空くと気持ちが悪くなるのでひたすら食べていました。

アメリカではつわりのことを”morning sickness”というのですが、後期つわりはまさにこれで、朝になると気持ち悪さが増していました。初期のつわりは朝昼夜関係なくずっと気持ちが悪かったです。

始まりは破水から

出産の兆候としておしるし、陣痛など様々ありますが、私の場合は”破水”からでした。夜間だったのでドクターオフィスに連絡することなく、あらかじめ出産予約をしておいた病院の緊急入口へと直接向かいました。

前日の検診では2週間後の39週で出産することになると言われ、もう少しだなぁと思っていたのですが、まさかの37週で破水。正産期に入ったタイミングを見計らったかのように出てくる準備をしていた我が子でした。

病院へ着くと、すぐに車椅子で連れて行かれベッドに横になり、赤ちゃんの状態など各種検査し、問診があり、生年月日や予定日などを聞かれ、ナースが情報をPCに入れていき、点滴が始まります。

通常、破水は子宮口が全開になった分娩時に起こります。私の場合は、破水が先なので前期破水と言うそうです。破水したもののなかなか陣痛が始まらなかったため、陣痛促進をおこないました。(破水すると母体と胎児の感染リスクが高まる)

初めての無痛分娩

さて、アメリカでは無痛分娩が主流でその割合は7割以上と言われています。分娩前にエピデュアルと呼ばれる麻酔を打つのですが、専門の麻酔科医が行うので安全な環境が整っており、より安心して任せられるかと思います。

無痛分娩を選択する場合、そのリスクに関する書類や緊急時の”帝王切開”や”輸血”をすることへの同意書にサインをします。エピデュアルは陣痛の痛みとの兼ね合いで、基本的には自分のタイミングで入れることができます。

ナースにGOサインを出し、麻酔科医が到着すると、エピデュアルの前にまず”表面麻酔”を背中の腰骨あたりに注入します。液体が体内に入るのが分かるとともにもちろん痛みもあります。(陣痛の痛みに比べれば余裕です。)

エピデュアルを入れるとお産の進みが遅くなるので、なるべく痛みが限界に達するまで待ちます。麻酔を入れて効き始めるまで5〜20分ほどです。麻酔が効き始めて少し落ち着いたので仮眠をとって本番=お産に備えました。

回旋異常

分娩時、胎児は産道を通りやすくする為に、何度か向きを変え、回転しながら骨盤内に進んでいくのですが、我が子はうまく回転できず途中で引っかかってしまい、なかなか出てこれませんでした。(回施異常と言うそうです。)

さらに、無痛分娩ではありながら私の場合”麻酔が部分的に効いていなかった“(レアケースですがこんな事もあるようです)ため、出産直前は陣痛の痛みと我が子の頭が産道にあたる感覚も感じました。

回旋異常の場合、胎児の状態に応じて、吸引分娩や帝王切開になることもあるようですが、私はなんとか経膣分娩で出産できました。最後にドクターが上手に我が子を中から引っ張り出してくれたおかげです。

第一子誕生

出てきた瞬間、「おぎゃー」との大きな産声ではなく「ほぇ」と一言か細い声を発した我が子。笑 なんだかイメージと違い拍子抜けしましたが、今思えば産道を通るのに苦戦し疲れ切っていたのかもしれません。

そして、試合後のボクサーのように顔がぼこぼこだったのです。産道を通る際に色んなところに顔をぶつけてきたのかなぁ、これだけ戦ってこの世に出てきたのだと思うと涙があふれました。まさに小さいけど勇敢な戦士です!

リスク妊婦で26週での出血と入院、切迫早産に分娩時の回旋異常など波乱に満ちた妊娠出産でしたが、予定日より3週間早く無事に産まれてきてくれました。現在4歳、すくすく成長しております。

妊娠も出産も十人十色でそれぞれ異なりますが、私の経験から”こんなこともある”また”同じような状況にある”例の一つとして参考になれば幸いです。次回は、アメリカで出産〜ケース2(第二子編)〜になります。

 

 

愛を込めて…

Noriko