帰国後のモヤモヤはリバースカルチャーショック!?

アメリカで約6年を過ごし、日本に帰国して1年と少しが過ぎました。季節が一巡し、日本での新しい生活にも慣れ、知り合いも増えてやっと基盤が整ったような気がします。

しかし、なんだかモヤモヤ。この一年間は気分の浮き沈みがとても激しく、コントロールが難しいほどで、イライラして落ち込んで泣けてきてまたネガティブになるという悪循環。

母国に帰ってきただけなのに、この生き苦しさは一体なぜなんだろう?と自問自答する日々の中で、「リバースカルチャーショック」という言葉に辿り着きました。

そこで、今回は留学や駐在などある一定期間を海外で過ごし、帰国した後に起こりうると言われるリバースカルチャーショックについて書いていきたいと思います。

リバースカルチャーショックとは?

海外に行って初めて直面する文化の違いなどに対して「カルチャーショック」とよく言いますが、「リバースカルチャーショック」とは、海外生活を終えて自国に帰国した人が経験する"違和感"のことです。

ある研究では、海外生活を経験した日本人の約8割が、帰国後に「リバースカルチャーショック」を感じ、自国の文化への最適応に困難が伴い、戸惑いを感じたとしています。

ひとえにリバースカルチャーショックと言っても、人により環境や感じ方も異なるので、ここからは私自身の経験をもとに「帰国後のモヤモヤ」を紐解いていきたいと思います。

帰国後の葛藤

まず第一に、日本で生まれ育って、久しぶりの日本、言葉も不自由なく通じる「安心感」のある生活、家族や友達もいて、まさにホームに戻ってきたにもかかわらず、何かがおかしい

これが、自分の中で一番の戸惑いでした。ホームのはずなのに、なにか違和感があり、居場所がないように思え、生活するにあたり「?」ばかりが頭の中にありました。

実際、日本の生活は便利で快適で素晴らしいのに、このモヤモヤは、自分が変わってしまったからか、私はアメリカかぶれなのか、と自分が悪いのではないかと思えてきて辛かったのです。

モヤモヤの原因

日々の生活の中で感じる違和感やモヤモヤは、自分自身に原因があるのだと思っていましたが、客観的に考えてみると様々な事柄が重なっていることがみえてきました。

下記はすべて私が帰国後に感じたリバースカルチャーショックの数々です。私自身も以前なら「そんなことで?」と思うようなことではありますが、共感できるものがあれば幸いです。笑

1. アメリカの常識と日本の常識

アメリカへ行った時は、えっ!?って思うことがあったとしても、文化の違いが前提にあるので「まぁしょうがない」で済んだのです。もともと期待もなかったから!

しかし、日本へ帰国した時には、自分は日本人であるという意識から、しょうがないでは済まなかったのです。自分がアメリカの文化や生活に慣れたことに気づいていなかったから!

・支払い、買い物、食べ物

アメリカはカード社会なので、支払いに現金を使うことはほぼ皆無でしたが(現金も普通に使えます)、日本では「現金しか使えない」お店がとても多い!会計時に商品を返すことがしばしばありました。

返品大国のアメリカでは未使用・未開封であればほぼ何でも返品ができますが(開封後もできることがある)、日本ではネットでの買い物でさえ返品できないことが多いなぁと感じました。

アメリカは意外にも健康意識が高く、オーガニックや無添加な食品が簡単に手に入り、種類が豊富ですが(Wholefoods Marketは最強)、日本は種類も少なく割高で良い食品が手に入りづらい

・幼稚園関連、書類申請

幼稚園の入園に関して、アメリカは電話一本でOK(書類もある)かつ入園後の持ち物も水筒くらいなのに対し、日本では願書や面接などプロセスがあり、入園時に用意するものや名前書きなど規定や準備することが多い

また、アメリカではSSN(ソーシャルセキュリティナンバー)とサインでほぼ書類提出は完結するのに対し、日本では戸籍や住民票を発行したり、印鑑が必要であったりなかなかスムーズに申請できず、時間と手間がかかると思います。

・国土、土地の広さ

アメリカはご存知の通り、広大な土地があるので、家や駐車場、道路のスペースが広いですが、日本は全てにおいてスペースが狭く、外出時も人口密度が高い

このスペースや人との距離感は、心の余裕にも関係するのではないかとも思います。他人とのパーソナルスペースが狭くなるにつれ、ストレスも感じやすく気疲れしやすいのではないでしょうか?

・子育て

アメリカでは特に小さい子ども連れに優しく、キッズファーストの精神を随所で感じましたが、日本では舌打ちされたりと子連れはなんだか肩身が狭い!(もちろんなかには優しい人もいます。)

また、アメリカはベビーシッターやデイケア(保育園)など、お金を払えば気軽に子どもを預けることができますが、日本では手続きを含め規定が多く”気軽に”子どもを預けるのが難しい

・ 気候

アメリカはほぼ雨が降らないのと同時に、夏も湿度が低くカラッとした天気が多いですが、日本は雨季からジメーっとした気候が続き湿度も高いので体調も崩しがち

私の母はリウマチを患っているのですが、出産の手伝いにアメリカへ来ている期間は体調も良く、数値も改善しました。(体調と気候との関係も一理ある!)

また、アメリカは街全体で蚊の対策(薬を撒くなど)をしているので、夏も蚊に刺されることはほぼないのですが、日本は驚くほど蚊が多く、特に公園では虫除けスプレーが手放せない

2. 日本人特有のあれこれ

日本にいた時には全く気がつかなかった当たり前のことが、一度海外で生活をしてから帰国することで”際立って”違和感となることを痛感!それは日本人特有のものなのですが、、、

私が感じたこの”違和感”は、日本の伝統や文化であり、美徳でもある。一方で自身の首を絞めることにもなりました。気にしなければ良いことまで、つい気にしてしまう自分がいるのです。

・日本語の表現

アメリカでは言語で苦労しましたが、表現は直接的なことが多いので、意外と理解できました。しかし、日本語には様々な表現の仕方があるので文章や気持ちを読み解くのにとても神経を使うと思います。

また「本音と建前」という言葉があるように、婉曲な表現は本心が分かりづらい上に、コロナ禍で初めて知り合う人達も全てマスクをしていたので、コミュニケーションに難がありました。

・規則が細かい

アメリカは生活においてのルールはシンプルですが、良い悪いは別として日本は非常に細かい!ゴミの分別を始め、手続き関連、幼稚園に至るまで、とても厳格かつ複雑化していると思います。

また、規則に関して「理由があいまい」なものも多く、質問しても納得のいく回答が得られないことがあり、なぜだろう?とモヤモヤしてしまいました。

・気遣い、しきたり、他人の目

日本には伝統的なマナーや暗黙のルールがとても多いので、行動や服装に非常に気を遣います。多様性が広がっているといえど、まだまだ同調圧力があり他人の目が気になる空気があると思います。

また、一時KYという言葉が流行ったように、「察する」「空気を読む」ことが日本人の美徳ではありますが、自己主張が全てのアメリカと比べて戸惑いを感じることが多々ありました。

・年齢

アラサーという言葉に代表されるように、日本は年齢で区別することが非常に多いと感じます。また、ファッションや流行、SNSの使い方に至るまで世代間の違いを各媒体がこぞって取り上げています。

若年信仰とも言うのか、加齢に対するネガティブなイメージがいまだ根強く感じます。アメリカでは年齢のことなど考えたこともなかったのですが、日本では年齢フィルターが発生!気にせざるおえない状況に飲み込まれました。

3. 出国前と帰国後の環境

リバースカルチャーショックしかり、帰国後に私が苦しんだ最大の理由は、出国前と帰国後の生活のギャップが大きかったこと!自分自身の環境の変化だと思っています。

・独身生活、結婚と子育て

出国前は独身でバリバリ働きながら自由な生活を送っていましたが、結婚と同時にアメリカへ。帰国後は子ども3人の専業主婦という全く違う自分になっており、まさにアイデンティティクライシスに陥りました。

また、結婚生活や子育てに関してはアメリカでの生活がすべて基盤となったため、日本での生活は手探りでシフトしていくのにとても時間がかかったのです。(生活のギャップが大きい!)

・住む場所、人間関係

帰国後は、出国前に住んでいた場所と異なり全く新しい場所でした。自分の家族はもちろん知り合いも誰一人いないので、人間関係をまた一から構築するのにも気合いが必要でした。

幸いにも良い人達に恵まれたので、これに関しては感謝しかないのですが、せっかくの新しい出会いもコロナ禍のためマスクコミュニケーションだったのにはもどかしさがありました。

・車の運転

出国前はペーパードライバーで、アメリカで初めて車を運転しました。これもまたアメリカが基盤となっているので、帰国後の運転は恐怖でしかありませんでした。

アメリカはやはり道路が広く、車道と歩道がはっきり分かれており、車社会なので歩行者と接近してすれ違うことは一部のダウンタウンや大都市でもない限りほぼありません。

日本は道が狭い上、歩行者や自転車も多く車のすれすれを通ったりするので常にヒヤヒヤしていました。また、交通ルールも違うのではじめの頃は間違えないように必死だったのです。

リバースカルチャーショックを乗り越えるための3ステップ

ここ一年、この「リバースカルチャーショック」の葛藤とうまく向き合えずにいましたが、最近やっと心がほぐれて解決に向かっている気がします。

人それぞれ状況は異なるので、一概にこれが良いと言うのは明確には分かりませんが、実際に私がやってきたことで効果があったものをシェアしたいと思います。

1. リバースカルチャーショックについて知る

まずはネットで検索してみましょう!私もリバースカルチャーショックという言葉自体、検索して初めて知りましたが、そんなことがあるのかと衝撃でもありました。(正直もっと早くに知っておきたかった!)

しかし、帰国者の8割が経験すると言われるように、同じような人がたくさんいることを知り、共感できたことでだいぶ救われました。また、他の方々の経験が参考にもなったのです。

海外生活を始める時以上に、帰国後の生活に慣れていくには忍耐力が必要です。それにより、気づかぬうちにストレスを抱えてしまうことが誰にでも起こりうるということを理解しておくとよいです。

2. 紙に書き出す、人に話す

リバースカルチャーショックの原因は一つではなく色々な事柄が重なっているので、違和感と戸惑いを感じます。モヤモヤしたり気分が落ち込んだら「とにかく紙に書く」のが良いです。

ありのままに書いていくと、「違和感や戸惑い」が明確になり、自分が何にモヤモヤしているのか、本当の気持ちが可視化されるので頭の中もクリアになります。さらに、知らないうちに問題もほぼ解決できるのです。

また、自分の気持ちを人に話すのも効果的です。話すことで曖昧なこともハッキリ分かるので、私も夫婦間でよく話をしました。気持ちを共有することで、孤独感が軽減され、より絆も深まります。

3. 自分の気持ちを理解する

書き出したり話して明確になったものに対してあーだこーだ考えるのではなく、ありのままの自分の気持ちを受け止める。こんな気持ちになるんだなと自身を理解することが大事です。

そうすることで勝手に蓄積されるストレスも軽減されるはず。どれだけネガティブな感情があったとしても、自身を責めることなく認めましょう。

その上でカルチャーショックの時と同様に、帰国とはいえ異国から帰ってきたのだから「しょうがない」と割り切り、過度な期待をせず、「こんなものだ」と思えれば気持ちも楽になります。

結局は時間が解決する

帰国後は、リバースカルチャーショックに様々な感情が湧き上がり、四苦八苦しますが、誰にでも起こりうることであり、新しい環境に慣れるほかありません。

「住めば都」という言葉があるように、初めはもどかしさがあったとしても、時が経つにつれ居心地の良い場所=ホームになっていくのだと思います。

とはいえ、帰国後にネガティブになることは辛いですよね。どうか自分を責めず焦らず楽しいことを考えて過ごしてください。大丈夫!必ず乗り越えられます。

 

 

愛を込めて…

Noriko